書評「絶滅の人類史」:なぜ「私たち」が生き延びたのか

「絶滅の人類史」:なぜ「私たち」が生き延びたのか  更科 功著 NHK出版新書 2018

我々は一人ではなかった!我々(ホモ・サピエンス)以外にもいた人類(ホモ属:25種類いた)が滅んでいった記録です。それはそのまま我々が生き延びた記録でもありました。

以下、内容に関するメモ。

  • 大型類人猿の共通祖先は1,500万年前にいた。700万年前にチンパンジーの祖先と我々の祖先が分岐。ホモ・サピエンスはその生き残り。ヒトはチンパンジーから進化したわけではない。チンパンジーがヒトから進化したわけではないのと同じ。
  • 森から追い出された人類と二足歩行の関係:自然選択による進化は2つの形質に関する条件(繁殖に有利&子に遺伝)をクリアする必要がある。

   疎林で果物を食べる。二足歩行すれば手で多くの果物を運べる。→ 繁殖に有利

   一夫一妻制が出現。自分が運ぶたくさんの果物を食べる子供は自分の子供で二足歩行になる。→ 子に遺伝

   このように二足歩行が広まっていった。

  • 火の仕様と言語の発達と脳の発達:100万年前ひ火を使うようになった。肉をより早く消化できるようになる。暇な時間ができて、その時間を使ってコミュニケーションを行うようになり、言語が発達。脳も大きくなる。
  • ホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)はホモ・サピエンス以外で一番最後まで生き残っていたホモ属。ホモ・サピエンスとの交雑もあった。
  • ミトコンドリアDNAは母系遺伝:長時間たてば、たくさんあった系統も減少。系統が一つになっても突然変異が起き続けているので、我々のミトコンドリアDNAは同じではない。遠い将来のミトコンドリアイブは我々の中にいる。どのミトコンドリアDNAが生き残るかはその時になって見ないとわからない。

 進化に関する本として良本だと思いました。たくさんいたホモ属の仲間の姿に想いを馳せずにはいられませんでした。